
ぼくには、お気に入りの場所がある。
家の中にはいろいろな場所があるのに、
気がつくと、いつもそこにいる。
やわらかくて、ちょうどよくて、
家の空気が全部見える場所。
それは、ソファのひじ掛け。
高すぎず、低すぎず、
ちょうどいい高さ。
あごを乗せると、ぴったりおさまる。
ここにいると、
ぼくのまわりの空気が静かになる。
安心って、たぶんこういうこと。
ここからは、
ママが動くのも見える。
兄ちゃんが部屋に入るのも分かる。
窓の外の光の変化も感じる。
だれかが帰ってくる気配も、
ここにいればすぐにわかる。
ぼくにとっては、家の様子が全部わかる特等席。
最初は周りを見ているけれど、
気がつくと、だんだんまぶたが重くなる。
体を丸くして、鼻先をしっぽに近づけると、
そのまま静かに眠ってしまう。
ぼくがひじ掛けで眠っていると、
ママはそっとこちらを見る。
そして、少しだけ表情がやわらぐ。
ぼくが安心していると、
ママも安心するみたい。
それなら、ここで眠るのも悪くない。
今日もぼくは、ひじ掛けの上。
家の空気を感じながら、
静かな時間の中にいる。
ママと兄ちゃんの暮らしの中に、
ぼくの場所がある。
そして、ぼくの安心できる場所は、
いつもこのひじ掛けなんだ。
お気に入りの場所があるということは、
安心できる場所があるということ。
ぼくは今日も、
ソファのひじ掛けの上で眠る。
家の空気に包まれながら、
静かな安心の中で。
