
ぼくは、ときどき耳をすませている。
家の中は静かだけれど、外からはいろいろな音が聞こえる。
車の音。
人が歩く音。
遠くのドアの音。
ぼくはその音を、なんとなく聞いている。
外を歩く人の足音は、みんな少しずつ違う。
早く歩く人。
ゆっくり歩く人。
重たい音の人。
ぼくはその音を聞きながら、ただじっとしている。
そして、ときどき
「あ、これは」
と思う音がある。
玄関のほうから聞こえてくる足音。
まだドアは開いていないけれど、
なんとなくそれがママだとわかる気がする。
ぼくは少しだけ立ち上がる。
そして、ドアが開く。
ママが帰ってくる。
「ただいま」
その声を聞くと、ぼくはしっぽを振る。
やっぱり、ママだった。
ぼくはまた、いつもの場所に座る。

